健康経営に取り組まれている企業様と日々お話する中で、現場ならではの気づきや学びをたくさんいただいています。
その中でも特に多いのが、「認定制度の違い」に関するご質問です。
たとえば…
- 銀の認定
- 金の認定
- 健康経営優良法人
これらの違い、明確に説明できますか?
社員の方や同僚に聞かれたとき、すぐに答えられるでしょうか?
実は、専門家でも混同しているケースがあるほど、制度の違いは複雑です。
特に東京都や健保組合が独自に運営する認定制度では、「銀」「金」「プラチナ」といったランク表記があるため、誤解が生まれやすくなっています。
今回は、実際の企業様とのやり取りから生まれた「よくある疑問」をもとに、健康経営に関する認定制度の違いをわかりやすく整理してみました。
制度の本質を理解することで、社内での説明や取り組みの方向性もぐっと明確になりますよ。

一般社団法人日本アスリートウォーキング協会 健康経営エキスパートアドバイザー 竹内尚子
社会福祉士・精神保健福祉士
社会福祉士・精神保健福祉士として福祉行政に10年従事。その後、健康経営エキスパートアドバイザー資格を取得し、働く人々の健康サポートに取り組む。現在は企業への健康経営導入支援や、ウォーキング研修を中心としたヘルスケアプログラムの提供を通じて、従業員の健康促進に尽力中。
■目次
- はじめに:企業との会話から見えた疑問
- 健康経営とは? 背景と広がり
- 健康経営優良法人認定制度のしくみ
- 「銀の認定」とは? 健康経営優良法人との違い
- 東京都企業に多い”認定制度の混同”あるある
- 電話対応からの気づきと今後の工夫
- まとめ:認定制度を正しく理解し、信頼される企業対応へ
はじめに:企業との会話から見えた疑問
先日、ある企業さまとの電話対応の中で、思わぬ気づきがありました。
その企業さまは、健保組合が実施している「銀の認定」取得を独自に目指されていて、すでに社内での取り組みも進められているとのこと。私たちとしては、銀の認定取得後のステップとして「金の認定」や「健康経営優良法人」の認定取得をご案内し、さらに企業価値を高めていくサポートを想定していました。
ところが、ここにきて「健康経営優良法人って何ですか?」というご質問があり、驚きとともに大きな気づきがありました。
どうやらその企業さまは、「銀の認定」「金の認定」が健康経営に関するすべての認定だと認識されていたようで、経済産業省が推進する「健康経営優良法人」制度については、まったく知られていなかったのです。
そこで改めて、健康経営優良法人とは何か、そして健保組合の認定制度との違いについて、一から丁寧にご説明させていただきました。
このやり取りを通じて、「認定制度の違いが分かりづらい」「名称が似ていて混乱しやすい」という現場のリアルな課題を実感しました。特に東京都の企業さまでは、健保組合や自治体独自の認定制度が複数存在しているため、こうした混同は“あるある”なのかもしれません。
健康経営とは? 背景と広がり
「健康経営」とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組むこと。経済産業省が推進しており、企業の生産性向上や人材定着、社会的評価の向上など、さまざまなメリットがあるとされています。
特に中小企業にとっては、従業員の健康が事業の安定に直結するため、注目度が高まっています。
☝健康経営についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ご覧ください。
「【担当者必見】健康経営とは?実践方法や中小企業の取組事例紹介」
健康経営優良法人認定制度のしくみ
健康経営優良法人認定制度は、経済産業省と日本健康会議が共同で運営しているもので、健康経営に積極的に取り組む企業を「見える化」するための認定制度です。
認定には「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」があり、申請には一定の基準を満たす必要があります。認定されると、企業の信用力向上や採用活動でのアピール、自治体からの支援など、さまざまなメリットがあります。
☝健康経営優良法人認定制度についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。ご覧ください。
【2万社超え!】健康経営優良法人認定で得られる4つのメリットとは
「銀の認定」とは? 健康経営優良法人との違い
今回の電話対応で出てきた「銀の認定を目指している」という言葉。実はこの“銀の認定”は、経済産業省が推進する「健康経営優良法人」制度の中には存在しません。
では、「銀の認定」とは何なのか?
多くの場合、これは企業が加入している健康保険組合が独自に設けている認定制度を指しています。たとえば、ある健保組合では、企業の健康づくりの取り組みに応じて「銀」「金」「プラチナ」といったランクを付けて認定する制度を運用しており、企業担当者の間ではそれが“健康経営の認定”だと認識されているケースが少なくありません。
一方で、「健康経営優良法人」は経済産業省と日本健康会議が共同で運営する全国規模の公式認定制度です。こちらは、企業の健康経営の取り組みを見える化し、社会的に評価するための制度であり、ランクではなく「認定法人」として公表されます。
つまり、
- 「銀の認定」は健保組合などが独自に運営する地域単位の制度
- 「健康経営優良法人」は国が推進する公式な全国制度
という違いがあります。
東京都企業に多い“認定制度の混同”あるある
東京都内の企業でよく見かけるのが、「健康経営の認定を目指しているけど、実は何を目指しているのか曖昧」というケース。
こんな“あるある”、あなたの会社にも当てはまりませんか?
💬 よくある混乱
• 「銀の認定を目指しています!」→ 実は健保組合独自の制度だった
• 「うちは金の認定を取ったから、もう優良法人です」→ 健保組合の認定と経産省の制度を混同
• 「健康経営優良法人って、東京都の制度ですよね?」→ 実は国の制度
🧭 混乱の原因は?
• 健保組合や自治体が独自に運営する認定制度が複数存在
• 「銀」「金」「プラチナ」などの名称が似ていて、制度の違いが見えづらい
• 社内で制度の説明が十分にされていない
✅ 正しく理解するためのヒント
◆制度名 | ◆運営主体 | ◆認定の種類 | ◆申請方法 |
健康経営優良法人(経産省) | 国(経済産業省) | 中小規模法人・大規模法人 | GHG(健康経営ガイドライン)に基づき申請 |
健保組合の認定制度 | 各種保険組合 | 銀・金・プラチナなど | 健保組合の独自基準に基づき申請 |
※制度の目的やメリットも異なるため、まずは「自社がどの制度を目指しているのか」を明確にすることが第一歩です。
電話対応からの気づきと今後の工夫
今回の電話対応を通じて、「制度の違いを丁寧に説明することの大切さ」を改めて実感しました。
今後は、以下のような工夫を取り入れていきたいと思っています。
- 認定制度の違いをまとめた説明資料の整備
- 電話対応時の質問や説明内容の見直し
- ブログやSNSでの情報発信を通じた啓発
企業の担当者様が安心して取り組めるよう、わかりやすく、親しみやすい情報提供を心がけていきます。
まとめ:認定制度を正しく理解し、信頼される企業対応へ
健康経営の本質は、“人を大切にする経営”です。認定制度は、その姿勢を社会に示すためのひとつの手段。
制度の違いを正しく理解することで、企業としての信頼性も高まり、従業員や取引先との関係性もより良いものになっていくはずです。
これからも、現場での気づきを大切にしながら、企業の皆さまのサポートに努めてまいります。