戦略的に従業員の健康投資を行う「健康経営」に取り組む企業が増えています。
健康経営について取り組む中で、「ホワイト500」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、ホワイト500とは何かについてはぼんやりとしか把握できていない…という方も少なからずいるはず。今さら人に聞きづらい…そんな方は必見です。
本記事では、健康経営の取り組みを評価する「健康経営優良法人制度」の中でも、大規模法人部門で上位500社に認定される「ホワイト500」について詳しく解説します!

一般社団法人日本アスリートウォーキング協会 健康経営エキスパートアドバイザー 竹内尚子
社会福祉士・精神保健福祉士
社会福祉士・精神保健福祉士として福祉行政に10年従事。その後、健康経営エキスパートアドバイザー資格を取得し、働く人々の健康サポートに取り組む。現在は企業への健康経営導入支援や、ウォーキング研修を中心としたヘルスケアプログラムの提供を通じて、従業員の健康促進に尽力中。
■目次
- ホワイト500とは
- ホワイト500認定のメリット
- ホワイト500の認定要件
- ホワイト500認定の申請手順
- ホワイト500認定企業の取り組み事例
- ホワイト500を目指す企業へのサポート
- まとめ
1.ホワイト500とは
まずは、「ホワイト500」とは何かというところから解説いたします。
ホワイト500とは何かを説明できるようになるだけではなく、ホワイト500に似た言葉「ブライト500」や「ネクストブライト1000」についても理解できるように違いを見ていきましょう。
◆健康経営優良法人認定制度で認定される称号
ホワイト500とは、経済産業省が推進する健康経営優良法人認定制度において、大規模法人部門の上位500社に与えられる称号です。
この制度は、企業の健康経営に関する取り組みを評価し、優れた企業を顕彰することで、日本全体の働き方改革や生産性向上を促す目的を持っています。
健康経営は、従業員の健康促進を企業の経営戦略の一環として位置づける考え方です。企業が積極的に健康維持や働きやすい環境整備を行うことで、労働生産性の向上や企業イメージの向上につながるとされています。
※「健康経営とは」については、下記記事にて詳しく解説していますので、興味のある方はこちらをお読みください。
👆【担当者必見】健康経営とは?実践方法や中小企業の取組事例紹介
◆ホワイト500とブライト500の違い
ホワイト500とブライト500は、健康経営優良法人認定制度における上位企業に付与される称号ですが、対象企業の規模が異なります。
- ホワイト500:大規模法人(従業員数が一定以上の企業)が対象。健康経営の取り組みが特に優れた上位500社に認定されます。
- ブライト500:中小規模法人が対象。地域社会への健康経営の発信や、従業員の健康管理に積極的な企業の中から上位500社が選ばれます。
健康経営優良法人2025では、大規模法人部門3400法人、中小規模法人部門19796法人が認定されており、それぞれの上位500社がホワイト500、ブライト500の冠を付加されています。(2025認定より、中小規模法人部門で501~1500位の法人には「ネクストブライト1000」という称号が付加されています)
※参考:経済産業省「健康経営優良法人2025」認定法人が決定しました
2.ホワイト500認定のメリット
ホワイト500認定を受けることで、企業はさまざまなメリットを享受できます。
- 企業イメージの向上
- 優れた人材の確保
- 離職率の低下
- 従業員の健康維持向上
- 生産性の向上でモチベーションアップ
- 投資家へのイメージアップ
一つずつ詳しく見ていきましょう!
◆企業イメージの向上
健康経営に積極的に取り組む企業は、社会的な評価が高まり、ブランド価値の向上につながります。従業員の健康を重視する企業として認知されることで、消費者や求職者、投資家からの信頼を獲得しやすくなります。
また、自治体や政府との連携も強化されるため、企業のCSR活動(社会的責任)にも良い影響を与えます。
◆優れた人材の確保
昨今の就職活動では、給与や福利厚生だけでなく、職場環境や働きやすさが重視される傾向があります。
ホワイト500認定企業は、従業員の健康を支援する施策を積極的に導入しているため、健康に対する意識が高い求職者にとって魅力的な企業となります。
結果として、優秀な人材の確保や定着率向上につながるのです。
実際に、健康経営優良法人という認定を受けている企業は、受けていない企業の2割増で人材確保ができているとのデータも出ています。
◆離職率の低下
健康経営に力を入れる企業では、従業員の満足度が高まり、職場定着率が向上します。
特に、労働環境の改善やメンタルヘルス対策が進むことで、職場のストレス軽減やワークライフバランスの向上につながり、離職率が低下するケースが多く報告されています。
◆従業員の健康維持向上
企業が健康管理を支援することで、従業員自身の健康意識も高まり、病欠率の低下や生産性向上が期待できます。
例えば、定期健康診断の充実やフィットネス施設の設置、健康相談窓口の開設などの施策が健康維持に寄与します。
◆生産性の向上でモチベーションアップ
健康的な職場環境は、従業員のモチベーションを高め、業務効率を向上させます。
病欠が減少するだけでなく、仕事への集中力向上やポジティブな職場文化の醸成にもつながります。
◆投資家へのイメージアップ
ESG投資(環境・社会・ガバナンスを考慮する投資)の観点からも、ホワイト500認定企業は魅力的な投資対象となります。
健康経営を積極的に推進する企業は持続可能な成長を重視していると判断され、投資家やステークホルダーから高く評価される傾向があります。
3.ホワイト500の認定要件
ホワイト500認定を受けるためには、経済産業省と日本健康会議が定める以下の5つの評価基準を満たす必要があります。これは企業が「持続可能な健康経営」を実施しているかどうかを判断するための重要なポイントとなります。
- 経営理念 – 健康経営を企業の経営方針に組み込んでいること
- 組織体制 – 健康経営に関する専門部署や責任者を設置していること
- 制度・施策実行 – 健康増進のための施策を実施していること
- 評価・改善 – 健康経営の取り組みを定期的に評価し改善を図っていること
- 法令順守・リスクマネジメント – 労働安全や健康管理に関する法令を順守し、リスク管理を徹底していること
1つずつ見ていきましょう。
〈1〉経営理念
企業が健康経営を経営戦略の中核として位置付けているかが問われます。
健康経営は単なる福利厚生の一環ではなく、企業の生産性や業績に大きく関与する重要な要素です。
認定を受けるためには、経営理念の中に「従業員の健康を経営の柱として考える」姿勢が明確に示されていることが求められます。
例えば、「健康経営宣言」として社内外に発信し、経営層が主体的に関与していること、経営者自身が健康診断を定期受診していることも認定要件となっています。
〈2〉組織体制
企業内に健康経営を推進する責任者や専門部署が設置されているかが重要視されます。
例えば、人事部や福利厚生担当が健康経営の施策を運営するだけでなく、専任の健康経営推進チームを設けることで、より体系的に戦略を進めることが可能になります。
企業内での健康課題に対する取り組みが組織的に実施されているかどうかが評価のポイントとなります。
〈3〉制度・施策実行
健康診断の充実、運動推進プログラム、メンタルヘルス対策など、具体的な健康施策を導入しているかが認定の条件です。
例えば、以下のような取り組み等が考えられます。
- 健康診断の受診率向上(定期健康診断を100%実施する)
- 運動促進(社内フィットネスプログラムや歩数競争イベントの開催)
- ストレスチェック制度の運用(従業員のメンタルヘルスをサポート)
- 食生活改善プログラム(社員食堂での栄養バランスを考慮したメニュー提供)
〈4〉評価・改善
企業は健康経営の成果を定期的に評価し、必要に応じて施策を改善することが求められます。
健康経営は単発の取り組みではなく、PDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)を回しながら継続的に進化させることが重要です。
例えば、健康診断結果のデータ分析を行い、課題に応じた新しい施策を導入することで、企業の健康経営水準を高めることができます。
〈5〉法令順守・リスクマネジメント
企業は健康経営を推進する上で労働安全衛生法などの法令を厳守し、適切なリスク管理を行う必要があります。
例えば、長時間労働の抑制やハラスメント対策の実施、健康リスク管理のための施策(産業医の配置や健康相談窓口の設置)が求められます。
4.ホワイト500認定の申請手順
ホワイト500を取得するには、以下の5つのステップを踏む必要があります。
- 健康経営度調査に回答
- フィードバックシートの返送
- 申請書類の提出
- 健康経営優良法人認定委員会の審査
- 健康経営優良法人認定委員会による認定
認定を受けるためには、事前の準備をしっかりと整えることが重要です。
〈1〉健康経営度調査に回答
経済産業省が実施する「健康経営度調査」のアンケートに回答します。
この調査は企業の健康経営に関する取り組みを定量的に測るもので、企業の現状と改善点を把握するために活用されます。調査項目には以下のような内容が含まれます。
- 健康経営の方針と実施計画
- 従業員の健康診断受診率
- メンタルヘルス対策の有無
- 運動・食生活改善プログラムの導入状況
〈2〉フィードバックシートの返送
健康経営度調査の結果を基に、企業へフィードバックシートが提供されます。
このシートには、企業の健康経営の現状と改善すべき点が記載されており、認定取得に向けた重要な指針となります。企業はこのフィードバックを活用し、施策の強化や改善を進めることが推奨されます。
〈3〉申請書類の提出
申請書類を作成し、経済産業省に提出します。
企業が健康経営の取り組みをしっかりとアピールするために、過去の活動報告や実施結果を明確に記載することが重要です。また、必要書類として健康経営に関する企業方針・施策一覧・成果報告書などが求められます。
〈4〉健康経営優良法人認定委員会の審査
健康経営優良法人認定委員会が企業の申請内容を精査し、認定の可否を決定します。
審査では、企業の取り組みが基準を満たしているかどうかが厳しくチェックされ、必要に応じて追加の説明や補足資料を求められることもあります。
〈5〉健康経営優良法人認定委員会による認定
審査に通過した企業は、正式に「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定されます。
認定後は、企業ホームページなどで発信したり、採用活動や広報戦略に活用することで、企業ブランドの向上につなげることができます。
5.ホワイト500認定企業の取り組み事例
ホワイト500に認定されている企業は、様々なユニークな施策を導入しています。ここでは、代表的な事例を紹介します。
事例〈1〉:味の素株式会社
味の素株式会社は、「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」という言葉を念頭に、健康経営戦略マップを作成して、積極的に従業員の健康投資を行っている企業の一つです。
具体的には、社員のセルフケアが習慣化されるような継続的なサポートが充実しており、食生活改善に向けた適正糖質セミナーの開催や、運動習慣改善のためのウォーキングイベント等を実施しています。
また、メンタルヘルスでは、産業医による全基幹職(管理職)を対象に、健康管理の基礎知識向上を目的としたラインケア研修を実施しています。
※参考:味の素グループ企業情報>健康経営
事例〈2〉:住友生命保険相互会社
住友生命保険相互会社は、一人ひとりが主体的に健康維持・増進に取り組むことができる「いきいきと働き続けられる会社」を目指して、健康経営に取り組んでいます。
具体的には、健康診断の2次健診対象者率30%未満維持を目標に設定して取組を進めたり、禁煙の取り組みとして「卒煙サポート運営」に取り組んだりしています。また、運動習慣改善促進のため、「Vitality健康プログラム」の活用促進や年2回の「社内ウォーキングキャンペーン」の開催等で健康増進の習慣作りに取り組んでいます。
健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)~ホワイト500~」に7年連続で認定されている企業です。
※参考:住友生命について>サステナビリティ>持続的・安定的な成長の実現>健康経営
6.ホワイト500を目指す企業へのサポート
弊社では、ホワイト500を目指す企業様に向けて、運動支援プログラム、ウォーキング研修を提供してサポートさせていただいています。例えば、運動不足解消のためのストレッチとウォーキング研修では、下記のようなお悩みを健康経営を推進している担当者の方から伺います。
- 営業で外を歩くのに食生活が乱れてしまっている従業員が多い
- 清掃業務の仕事をしているため、ひざや腰を痛めてしまいやすく正しい歩き方を取り入れたい
- メタボ率が高い状況を改善したい
- 事務仕事で一日中動く事が少ない部署で、時間内にできる運動を知りたい
等、それぞれの企業様の悩みに沿って、本質的な健康維持向上のサポートを実施します。
具体的には、簡単に取り組めるストレッチやウォーキング研修を開催し、専門のインストラクターが指導して従業員の運動不足を解消します。仕事中や通勤時間帯を活用して実践できる内容なので、とても取り入れやすいというお声をいただいています。
7.まとめ
ホワイト500の認定を受けることで、企業は従業員の健康を重視した経営を実現し、社会に対して健康への取り組みをアピールできます。認定の取得は、企業イメージの向上や優秀な人材の確保、離職率の低下など、様々なメリットをもたらします。
ホワイト500を目指す企業は、戦略的に健康経営を実践し、申請準備をしっかりと進めることが求められます。あなたの企業も、健康経営を実践し、ホワイト500認定を目指しませんか?